株式会社ナピル
2026年6月2日

大規模BESS運用を支える新機能「蓄電池協調制御エンジン」を開発 ~複数PCS・複数電池の協調制御による安定運用を実現~

PRE-RELEASE
ENECloud / ENE シリーズ 新機能

蓄電池協調制御エンジン

Battery Coordinated Control Engine
― 多PCS並列構成のSoCバランシングと100ms演算周期での高速協調制御を実現 ―
高圧・低圧BESS向け 次世代電力分配エンジン(ENE-C300/ENE-G300 対応)

01リリース概要

当社EMSプラットフォーム 「ENECloud」および EMS制御装置 ENE シリーズ 「ENE-C300(高圧向け)」「ENE-G300(低圧向け)」において稼働する新機能「蓄電池協調制御エンジン(Battery Coordinated Control Engine)」を開発しました。

本機能は、複数のPCS(パワーコンディショナ)および複数の電池クラスタ/ラックが並列接続される蓄電池システムにおいて、 個々の電池の容量・劣化度・SoC(残量)に応じて出力を動的に協調分配するとともに、BMSからの充電禁止/放電禁止信号に対して 100ms演算周期での高速協調制御を実現する、蓄電池システム運用の中核制御エンジンです。

対応機種:ENE-C300(高圧向け)/ENE-G300(低圧向け)
対象外:ENE-M100(住宅向け)は、本機能のサポート対象外です。

リリーススケジュール
  • 2026年第2四半期:限定パートナー向けクローズドβ提供(実証案件での運用検証)
  • 2026年第3四半期:商用版リリース(一般提供開始)

02主要指標

ディスパッチ
演算周期
100ms
高速協調制御の演算周期
SoC収束
ステップ数
4
ステップで偏差<0.2%へ
配分ラウンド
段数
3
段階の上限保護・余剰再配分
対応
トポロジ
2
クラスタ単位/ラック単位

03開発背景

3.1多PCS並列構成の蓄電池システムが抱える課題

大規模な蓄電池システムでは、複数の電池クラスタ/ラックが並列運転されますが、製造ロットや劣化進行度、温度環境の差により、各電池の実効容量・SoCは時間とともに乖離していきます。従来の均等配分方式では、以下のような課題が顕在化していました。

  • 満充電状態の電池がさらに放電を続け、過放電による劣化を招く
  • 残量の少ない電池がさらに充電を続け、過充電保護が作動してトリップする
  • BMS警報の発出から実際に運転状態へ反映されるまでにタイムラグが発生する
  • 複数PCS間の出力協調が困難で、最も能力の低いユニットがシステム全体のボトルネックとなる

3.2より短い周期での協調制御への要請

系統用蓄電池の大容量化と運用要件の高度化が進むなか、複数PCSの協調制御において、より短い周期での演算と即時の状態反映を実現することが、産業界からの強い要請となっています。多PCS並列構成における高速かつ安全な配分制御は、市場拡大とともにそのニーズが急速に高まっています。

当社は、これらの要請に応えるため、組込みコントローラに最適化された配分制御エンジンの研究開発を進め、ENECloud および ENE-C300/ENE-G300 上で動作する本機能の実装に至りました。

04主要機能

4.1SoCバランシング

各PCSに紐づく電池の容量・SoC(残量)・劣化度に応じて配分の重みを動的に決定し、システム全体のSoCを段階的に均一化します。SoCが低い電池には充電を多めに、SoCが高い電池には放電を多めに配分する仕組みにより、一部電池の早期枯渇や満充電による全体停止を回避し、システム可用時間を最大化します。

シミュレーション(4×100kWh、初期SoC 20/40/60/80%)では、4回のディスパッチサイクルでSoCの偏差が60%から0.2%未満まで収束することを確認しています。

4.2段階的な電力配分処理

算出された重みに基づき、各PCSへ電力を配分します。配分処理は、ハードウェア上限の保護、余剰量の再配分、定格電力の最終保護の段階的な処理として実行され、各PCSの能力範囲内で電力配分を最大化します。

4.3100ms演算周期でのディスパッチ

本エンジンは 100ms周期でディスパッチ演算を実行し、PCSへ配分指令を発行します。BMSの状態変化はプッシュ通知方式で即時取得し、次回のディスパッチサイクルに反映する設計により、ポーリング方式に依存しない高速な協調制御を実現しました。

また、PCSに紐づく電池のうち1組でも放電禁止を発出した場合は、当該PCSを停止させる保守的な安全規則を採用しており、電池間の不均衡に起因する二次故障を未然に防止します。停止したPCSが担っていた出力は、隣接PCSが次回のディスパッチサイクルで自動的に引き受けます。

4.4単PCS/多PCSの2つの配分ポリシーを自動切替

接続されているPCS台数に応じて、システムが最適な配分ポリシーを自動選択します。

  • 単PCS直接指令モード:ハードウェアの性能範囲内で直接電力指令を送信(小規模蓄電池・単PCS構成向け)
  • 多PCS SoCバランシングモード:各経路の電池残容量に応じた重み配分を実行し、SoC差を能動的に収束(大規模並列BESS構成向け)

4.5柔軟なトポロジ定義

設定ファイルにより、PCSと電池の対応関係を現地ごとに定義できます。

  • クラスタ単位の定義(Cluster):1台のPCSが直流母線を介して複数の電池クラスタを束ねる構成。各クラスタの能力を集約し、PCSの電力上限値として扱う
  • ラック単位の定義(Rack):1台のPCSが特定の電池ラックに対応する構成。故障ラックを切り離し、他ラックへの影響を遮断する精緻な制御に対応

4.6並列BMSの電力集約(2つの安全ポリシー)

並列接続されたBMSの能力集約には、システム構成に応じて以下の2つのポリシーを選択できます。

  • SUM加算モード:各BMSの能力を合算(各BMSに自己電流制限機能がある構成向け)
  • MIN×N 保守的モード:最も能力の低いBMSを基準とした保守的集計(自己電流制限機能がない構成向け)

05シナリオ:故障時の無瞬断ハンドオーバ

構成例:2台のPCSがそれぞれ2クラスタずつ管理し、計4組(各100kWh)の電池を運用するシステムにおいて、Cluster-Dで突発的なセル温度異常が発生し、BMSが放電禁止を発出するケースを想定します。

  • t = 0:BMSがCluster-Dのセル温度異常を検知し、放電禁止を発出
  • 即時:プッシュ通知方式により、本エンジンが状態変化を取得
  • 次回のディスパッチサイクル(100ms周期):PCS-1(Cluster-C/D側)を停止し、目標電力をPCS-0(Cluster-A/B側)へ再配分
  • 結果:故障したPCSは隔離され、PCS-0が無瞬断で全電力を引き受け、システム総出力は維持

06主要スペック

SPECIFICATION
機能名蓄電池協調制御エンジン(Battery Coordinated Control Engine/略称 BCCE)
対象製品ENECloud(クラウド側)/ENE-C300(高圧向け)/ENE-G300(低圧向け)
※ ENE-M100(住宅向け)は本機能のサポート対象外
ディスパッチ演算周期100ms
SoC収束性能4回のディスパッチサイクルで偏差60% → <0.2%(4×100kWh、試験条件下での代表値)
配分処理段階的な配分処理(上限保護・余剰再配分・定格保護)
配分ポリシー単PCS直接指令モード/多PCS SoCバランシングモード(自動切替)
トポロジ対応クラスタ単位(Cluster)/ラック単位(Rack)
BMS集約方式SUM加算モード/MIN×N 保守的モードの選択可能
構成方式設定ファイルによる定義(現地ごとに調整可能)
認証・準拠ISO/IEC 27001、ISO/IEC 27017
リリース時期2026年Q2 限定β/2026年Q3 商用版一般提供
注記 上記スペックは現時点の開発仕様に基づくものであり、正式リリース時に変更となる場合があります。

07主な適用領域

  • 系統用大規模蓄電池システム(グリッドスケールBESS):多PCS・多ラック並列構成における中核制御エンジン
  • 産業・商業用蓄電池:複数電池筐体の並列構成において、一部電池の早期枯渇によるトリップを回避し、SoCバランシングにより総使用可能時間を延長
  • 系統周波数調整用蓄電池:短周期での協調制御要件が高く、プッシュ通知方式によりBMSの保護信号を制御周期内に確実に反映
  • 太陽光発電併設型蓄電システム:日中の充電パターン差で生じる電池のSoC差を、放電時に自動的に平準化
  • 需給調整市場アグリゲーション:リソース側端末として、市場指令を正確かつ安全に実行

08ENECloudエコシステムとの統合

本機能は、当社エコシステムの構成要素として、現場制御からクラウドオーケストレーションまでを一気通貫で統合します。

  • ENECloud:蓄電池ポートフォリオの最適化、市場入札、SoC運用計画、運転監視・レポート
  • ENE-C300(高圧向け):BCCEエンジンを搭載し、高圧連系BESSの現場でリアルタイム制御を実行するEMS制御装置
  • ENE-G300(低圧向け):BCCEエンジンを搭載し、低圧連系蓄電システムの現場でリアルタイム制御を実行するEMS制御装置
  • ENE-M100(住宅向け):本機能のサポート対象外。住宅向け用途は単機構成を前提としているため、多PCS協調を主目的とする本機能の適用範囲には含まれません。

ENECloud との連携により、本エンジン向けの設定配信、運転スナップショットの取得、SoC収束履歴・配分実績レポートの取得が可能です。

09今後のロードマップ

  • 2026年Q2:限定パートナー向けクローズドβテスト(実証案件での運用検証)
  • 2026年Q3:商用版リリース(一般提供開始)

10留意事項

  • 演算周期・SoC収束性能は、当社試験環境下における代表値であり、実環境では設備構成・通信遅延・BMS/PCSの応答特性等により変動する場合があります。
  • 対応するBMS/PCSの仕様・通信プロトコルは機種により異なります。導入検討にあたっては、対象システムの構成・通信仕様・既設機器仕様に応じた事前評価を推奨いたします。
  • 本リリース文書に記載の数値・機能・時期はプレリリース時点のものであり、正式リリース時に変更となる場合があります。